以下はネタバレ

 そもそもやる気のないエリート海軍中尉キャフィは大して証拠もないのにギャロウェイ少佐(デミ)と被告の上等兵に挑発されて初めて司法取引をせずに軍事法廷の弁護人を買って出てしまう。証拠はほとんど状況証拠のみ。頼みの証人は自殺してしまう。最後の手段は総司令官ジェセップ大佐(ジャック)の自白を引き出すしかない。

 このラストのキャフィ中位とジェセップ大佐の対決が見事。熱演だけでなく、ジェセップ大佐の矛盾点を突く理路整然としたプロットが実に見事だった。これぞ法廷ドラマの醍醐味である。
 そして私はジェセップ大佐も決して悪者とは思えなかった。彼は部隊にとって最善を考えた上で誤った判断を下しただけで、極限状態だからこそ犯した「過失」であったと言える。*1

 最後にこの映画、「『軍隊は正義か?』というテーマを扱っている」というようなコメントをしている人を見かけるが間違っている。アメリカ人にとって軍隊は正義であり、それに疑問を投げかけるような映画はおそらく成功しない。この映画で扱っているのは、「どんな場合でも上官の命令は絶対か?」という問題である。敵兵との戦闘時においては上官の命令は絶対であり、敵兵を殺すことは正当化されるが、非戦闘時は上官の命令であっても殺人は正当化できない。だからこそ最後の評決で被告は不名誉除隊となったのである。

*1:ジャック・ニコルソンが演じるとみんな悪人に見えてしまうが